胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)
原因・症状・検査・治療について、消化器専門医がわかりやすく解説します。
胃・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や痛み止め薬(NSAIDs)の使用が主な原因で、胃や十二指腸の粘膜が傷つき、えぐれた状態になる病気です。適切な治療で治癒できますが、放置すると出血や穿孔(穴あき)などの重篤な合併症を招くことがあります。
📖 胃・十二指腸潰瘍とは

胃や十二指腸の粘膜は、胃酸・ペプシン(消化酵素)という強い攻撃因子と、粘液・血流・細胞再生といった防御因子のバランスで守られています。このバランスが崩れて粘膜が深くえぐれた状態を潰瘍といいます。

日本ではピロリ菌除菌治療の普及により患者数は大幅に減少していますが、高齢者を中心にNSAIDs(痛み止め・解熱剤)による薬剤性潰瘍や原因不明の特発性潰瘍が増加しており、潰瘍の成因は変化しています。

🔍 主な原因
🦠 ヘリコバクター・ピロリ菌
最も多い原因。胃や十二指腸の粘膜に感染し、炎症を引き起こして防御力を低下させます。除菌治療で根本的な再発予防が可能です。
💊 NSAIDs(痛み止め・解熱剤)
ロキソプロフェン・アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、胃粘膜を保護するプロスタグランジンの産生を抑え、潰瘍リスクを高めます。長期服用者は特に注意が必要です。
😰 ストレス・生活習慣
過度な精神的ストレス、過労、喫煙、過剰なアルコール摂取、不規則な食生活なども粘膜の防御力を低下させる要因です。
特発性潰瘍(原因不明)
ピロリ菌もNSAIDsも関係しない潰瘍が近年増加しています。背景にある体の状態を詳しく調べることが大切です。
🩺 症状

症状は個人差があり、無症状のこともあります。特に痛み止めを服用中の高齢の方は症状が出にくいにもかかわらず、潰瘍が進行していることがあります。

😣
みぞおちの痛み・不快感:胃潰瘍では食後30〜60分に痛みが出ることが多く、十二指腸潰瘍では空腹時・夜間に痛みが出やすい傾向があります。
🤢
吐き気・嘔吐・食欲不振:なんとなく気持ちが悪い、食欲が落ちたといった症状が続くこともあります。
🩸
黒い便(タール便)・吐血:潰瘍からの出血が起こると、コールタールのような黒くどろっとした便が出ます。大量出血の場合は血を吐くこともあります。
😮‍💨
貧血症状:出血が続くと、疲れやすさ・動悸・息切れなどの貧血症状が現れることがあります。
⚠️ このような場合はすぐに受診を
黒いタール状の便が出た・血を吐いた・突然の激しい腹痛がある場合は、出血や穿孔(穴あき)の可能性があります。緊急の処置が必要なことがありますので、速やかに医療機関を受診してください。
🔬 検査・診断

潰瘍の有無・深さ・範囲を確認するには胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が最も確実な方法です。出血が疑われる場合は緊急で内視鏡を行うこともあります。

1
胃カメラ(上部消化管内視鏡)
潰瘍の状態を直接観察し、必要に応じて組織を採取(生検)します。潰瘍に見える病変がじつは胃がんである場合もあるため、生検によるがんの鑑別は重要です。当院の胃カメラ検査については胃カメラ(内視鏡)検査のページをご覧ください。
2
ピロリ菌検査
当院では便中抗原検査および血液検査(抗体法)によるピロリ菌の検査を行っています。そのほか、内視鏡を使った迅速ウレアーゼ法・培養法、呼気を使った尿素呼気試験などの方法もあります。詳しくはピロリ菌のページをご覧ください。
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血液検査
出血による貧血の程度や全身状態を確認するために血液検査を行います。
⚠️ 潰瘍を放置すると…
潰瘍が深く進行すると、胃や十二指腸に穴が開く穿孔(せんこう)を起こし、腹膜炎になることがあります。また慢性的な瘢痕形成によって、胃の出口が狭くなる幽門狭窄が起こることもあります。いずれも緊急対応が必要な状態です。
💊 治療

原因に応じた治療を行います。内科的治療で多くの潰瘍は治癒しますが、出血・穿孔など緊急の場合は内視鏡的治療や外科的処置が必要になることがあります。

1
酸分泌抑制薬(PPI / P-CAB)
プロトンポンプ阻害薬(PPI)や新世代のカリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB:ボノプラザンなど)で胃酸の分泌を強力に抑え、粘膜の回復を促します。現在は第一選択薬として広く使用されています。
2
粘膜保護薬・防御因子増強薬
傷ついた粘膜を保護し、回復を助ける薬を酸分泌抑制薬と組み合わせて使用します。
3
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌が確認された場合は除菌療法を行います。除菌に成功すると潰瘍の再発率が大きく低下します。除菌治療の詳細はピロリ菌のページをご覧ください。
4
NSAIDsの中止・変更と予防的胃薬の併用
薬剤性潰瘍では原因薬の中止が基本ですが、止められない場合はCOX-2選択的阻害薬への変更やPPI・プロスタグランジン製剤の予防的投与を行います。
5
生活習慣の改善
禁煙・節酒、規則正しい食生活(消化のよい食事)、ストレスマネジメントが治癒と再発予防を助けます。
🔬 ピロリ菌除菌治療のながれ(概要)
1次除菌
酸分泌抑制薬+抗生物質2種類を7日間服用。
▼ 終了後4週間以上あけて判定検査
2次除菌(保険適用)
1次除菌が不成功の場合、薬の種類を変えて再治療。1・2次合計の成功率は約90%以上
▼ 終了後4週間以上あけて判定検査
3次除菌(自費)
2次除菌も不成功の場合は3次除菌以降(保険適用外)となります。ご相談ください。
💬 よくあるご質問(FAQ)
Q
胃潰瘍と十二指腸潰瘍はどう違うのですか?
A
潰瘍ができる場所の違いです。胃潰瘍は食後30〜60分ごろにみぞおちが痛むことが多く、十二指腸潰瘍は空腹時・夜間に痛みが出やすい傾向があります。いずれも胃カメラで確認できます。
Q
ピロリ菌の除菌治療はどのくらいかかりますか?
A
服薬期間は1週間(7日間)です。服薬後4週間以上あけて除菌が成功したかどうかを確認します。詳しくはピロリ菌のページをご覧ください。
Q
潰瘍が治った後も胃カメラは必要ですか?
A
はい。特に胃潰瘍の場合は治癒確認のための内視鏡フォローが必要です。がんとの鑑別を確実にするためにも治療後の再検査をおすすめします。当院の胃カメラ検査もご参照ください。
Q
胃潰瘍は胃がんになりますか?
A
胃潰瘍そのものが直接がんになることは稀ですが、潰瘍に見える病変がじつは胃がんである場合があります。そのため胃カメラ検査では必要に応じて組織の採取(生検)を行い、がんとの鑑別を確認します。
Q
痛み止め(NSAIDs)を飲んでいますが、胃潰瘍のリスクはありますか?
A
あります。NSAIDsは胃粘膜を保護するプロスタグランジンの産生を抑えるため、潰瘍リスクが上昇します。特に高齢の方・潰瘍の既往がある方・抗血栓薬を併用している方はリスクが高くなります。胃薬(PPIなど)の予防的併用についてご相談ください。
Q
黒い便が出ましたが大丈夫ですか?
A
黒くタール状の便は、上部消化管(胃・十二指腸)からの出血サインである可能性があります。放置すると貧血や大量出血につながる危険があります。すぐに医療機関を受診してください。鉄剤・活性炭などの服用でも黒くなることがあるため、医師にご相談ください。
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この記事の監修・執筆者
前川 直志
前川内科 院長
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医
三重県津市にて、地域に根差した消化器内科・内視鏡診療を行っています。
最終更新:2026年5月