
高血圧症の解説と最新の治療目標(JSH2025準拠)
【監修】 前川内科 院長:前川 直志(日本内科学会認定 総合内科専門医)
最終更新:2026年4月(JSH2025・2025年8月改訂版に準拠)
【最新の診療方針】
2025年8月、高血圧管理・治療ガイドライン(JSH2025)が6年ぶりに改訂されました。当院では診察室の数値だけでなく、ご自宅でリラックスして測る「家庭血圧」を最も重視して診断・治療を行います。
2025年8月、高血圧管理・治療ガイドライン(JSH2025)が6年ぶりに改訂されました。当院では診察室の数値だけでなく、ご自宅でリラックスして測る「家庭血圧」を最も重視して診断・治療を行います。
1. 高血圧の基準値
理想的な血圧
120/80 mmHg 未満
病院(診察室)での基準
140/90 mmHg 以上
ご自宅(家庭血圧)での基準
135/85 mmHg 以上
※診察室と家庭で数値が異なる場合、当院では家庭血圧の値を優先して診断・治療方針を決定します。
2. 新基準:降圧目標の原則統一
これまでは年齢や病気によって目標がバラバラでしたが、JSH2025では原則としてすべての成人で 130/80(家庭では125/75)mmHg未満を目指すことが推奨されました。
【新しい降圧目標(JSH2025)】
診察室:130/80 mmHg 未満
家 庭:125/75 mmHg 未満
※75歳以上の方・糖尿病・慢性腎臓病(CKD)・心不全など合併症のある方は、ふらつきや腎機能への影響に十分配慮しながら、個人の状態に合わせた目標値を設定します。「やみくもに下げる」のではなく、安全に、かつ確実に目標に近づけることを大切にしています。
3. 家庭血圧が「主役」です
「先生の前だと血圧が上がる(白衣高血圧)」という方は非常に多くいらっしゃいます。JSH2025では、診察室と家庭で数値が異なる場合、家庭血圧の数値を優先することが明確に定められました。
● 正しい測定プロトコル(JSH2025準拠)
- 機器:原則として「上腕式」の自動血圧計を使用しましょう。
- 朝:起床後1時間以内・トイレの後・朝食と服薬の前に測定。
- 晩:就寝前に、椅子に座って1〜2分安静にしてから測定。
- 回数:朝・晩ともに1〜2回測定してその平均を記録します。
- 期間:直近5〜7日間の平均値で判断します。
診察室での「一点の記録」ではなく、ご自宅での「継続した記録」こそが、最適なお薬の種類・量を決めるための最も正確なデータです。記録はアプリや手帳で管理し、受診時にお持ちください。
4. 放置するリスクと生活習慣の改善
高血圧を放置すると、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞・認知症・腎不全などのリスクが高まります。自覚症状がないまま進行するため「サイレントキラー」とも呼ばれます。
- 減塩+カリウム摂取(JSH2025新規追加):塩分は1日6g未満(可能なら5g未満)を目標に。さらにJSH2025では野菜・果物・豆・乳製品などカリウムを多く含む食品の積極的な摂取が新たに推奨されました。減塩だけでなくカリウムを増やすことで、より効果的に血圧を下げられます。ただし腎不全の方はカリウム制限が必要なため、ご相談ください。
- 有酸素運動+筋力トレーニング(JSH2025で強化):1日30分以上または週180分以上の有酸素運動(速歩き・水泳など)に加え、週2〜3回の筋トレ(スクワット・かかと上げなど)も血圧低下に有効とJSH2025で明記されました。
- 禁煙:喫煙は血管に直接ダメージを与え、降圧薬の効果も下げます。
- 節酒:男性は1日20〜30mL以下、女性は10〜20mL以下(純アルコール量)を目安に。週に数日の休肝日を設けましょう。
- 体重管理:BMI25未満を目標に。5kgの減量で収縮期血圧が約4〜5mmHg低下するとも言われています。
- 睡眠・ストレス管理:6〜8時間の睡眠を確保し、寒冷時の急な入浴にも注意しましょう。
★JSH2025では、スマートフォンアプリや測定デバイスを活用した「尿ナトカリ比(塩分とカリウムのバランス指標)」の自己管理も推奨されています。気になる方はお気軽にご相談ください。
5. お薬(降圧剤)について
● 治療は「患者様が主役」です
JSH2025では「診察室の数値が高いからすぐ増薬」ではなく、家庭血圧の推移を丁寧に見極めたうえで判断することが推奨されています。また、目標に達しない場合は単剤→2剤→3剤と早めにステップアップすることも明確に示されました。
自己判断で薬を中断・減量せず、まずは家庭血圧のデータをお持ちのうえでご相談ください。現在お使いの薬が複数ある方・副作用が気になる方も、記録をもとに最適な組み合わせへ調整できます。
【こんな時はご相談を】
ふらつき・立ちくらみ・冬場の急激な上昇・朝の頭重感など。家庭血圧の記録があれば、より安全で負担の少ない調整が可能です。
ふらつき・立ちくらみ・冬場の急激な上昇・朝の頭重感など。家庭血圧の記録があれば、より安全で負担の少ない調整が可能です。
6. よくあるご質問
自宅で何mmHgになったら受診すべきですか?
家庭血圧で135/85mmHg以上が数日続く場合はご受診をお勧めします。160/100mmHg以上の高い値や、ふらつき・頭痛・動悸などの症状が伴う場合はお早めにご相談ください。
降圧剤は一度飲み始めたらやめられませんか?
生活習慣の改善(減塩・運動・減量など)により血圧が安定すれば、医師の判断のもとで減薬・中止できる場合があります。ただし自己判断での中断は血圧の急上昇を招く危険があります。必ず主治医にご相談ください。
診察室では高いのに家では正常です。どちらが本当ですか?
これは「白衣高血圧」と呼ばれる状態です。JSH2025では家庭血圧を優先することが明確に定められており、当院でも家庭血圧を最重視して診断します。ただし逆に「仮面高血圧」(家庭では高いが診察室では正常)の場合もあるため、どちらの記録も大切です。
減塩以外に食事で気をつけることはありますか?
JSH2025ではカリウムの積極的な摂取が新たに推奨されました。野菜・果物・豆類・乳製品などを意識して摂ることで、減塩の効果をさらに高めることができます。ただし腎不全のある方はカリウムを制限する必要がありますので、ご注意ください。
高血圧の薬はどれくらいの種類がありますか?
主な第一選択薬として、カルシウム拮抗薬(CCB)・ARB・ACE阻害薬・利尿薬・β遮断薬があります。JSH2025では患者様の状態(心不全・腎臓病・糖尿病の有無など)に合わせた選択と、目標未達の場合の早期の2剤・3剤併用が推奨されています。
血圧手帳やアプリはどれを使えばよいですか?
JSH2025ではデジタルツールの活用が初めて公式に盛り込まれました。スマートフォンの血圧記録アプリや、一部の機器専用アプリなど様々なものがあります。








