咳・痰

 

 

咳・痰とは

咳(せき)は、気道に入り込んだ異物や分泌物を外へ出すための、体に備わった大切な防御反応です。 痰(たん)は気道の粘膜から分泌される粘液で、ウイルスや細菌などを絡め取って外に排出する働きをしています。

💡 咳はどれくらい続くのが"普通"?

日本呼吸器学会のガイドライン(2025年版)では、咳の持続期間によって次のように3つに分類しています。

急性咳嗽
3週間未満
多くは風邪・インフルエンザ・COVID-19などウイルス感染が原因。発熱・鼻水・のどの痛みを伴うことが多い。
遷延性咳嗽(せんえんせい)
3〜8週間
感染自体は治っても気道の炎症が残る「感染後咳嗽」が多い。COVID-19後に長引く例も報告されています。
慢性咳嗽(まんせい)
8週間以上
咳喘息・後鼻漏・逆流性食道炎などが主な原因。単なる「かぜの名残」ではなく、別の病気が隠れていることがほとんど。
咳・痰の主な原因
急性の咳(3週間以内):感染症が中心

多くはウイルスによる上気道炎(かぜ)です。発熱・鼻水・のどの痛みを伴います。インフルエンザ・COVID-19でも同様の症状が出ます。肺炎を起こしている場合は高熱・強い息苦しさが現れることがあり、注意が必要です。

かぜ症候群(ウイルス性上気道炎)
インフルエンザ・COVID-19(迅速抗原検査で診断します)
急性気管支炎
肺炎(マイコプラズマ肺炎など)
感染後に長引く咳(遷延性咳嗽)

風邪やCOVID-19が治ったあとも、気道粘膜が傷ついて過敏な状態が続き、咳だけが数週間〜8週間ほど残ることがあります。これを「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」と呼びます。感染自体は治っているため抗生物質は効きません。多くは時間とともに自然に改善しますが、つらい場合は咳を鎮める薬や吸入薬などで症状を和らげます。

COVID-19後に咳が1〜2か月以上続く「罹患後症状(いわゆるロングCOVID)」も報告されており、気道過敏性の亢進が原因のひとつと考えられています。

長引く咳(慢性咳嗽):8週間以上続く場合の代表的な原因
咳喘息(せきぜんそく):ゼーゼーはないが、乾いた咳が続く。夜間・早朝・冷気で悪化しやすい。吸入ステロイドが有効。
後鼻漏症候群(こうびろうしょうこうぐん):鼻水が喉に流れ落ちることで咳が出る。慢性副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎(花粉症)が背景になることが多い。
逆流性食道炎(GERD):胃酸が食道に逆流し、のどや気道を刺激して咳が起こる。胸やけがない場合でも原因になることがある。
アトピー咳嗽:喉のイガイガ感を伴う乾いた咳。アレルギー素因がある方に多い。
COPD(慢性閉塞性肺疾患):長年の喫煙が主な原因。痰を伴う咳が続き、息切れも出てくる。
薬の副作用:降圧薬の一種(ACE阻害薬)は咳の副作用が出やすい。心当たりがある場合は主治医にご相談を。
その他:肺がん・結核・心不全・間質性肺炎なども慢性の咳の原因になることがあります。
🔍 痰の色でわかること
透明・白っぽい痰:正常に近い状態。ウイルス感染の初期、気管支喘息、アレルギーなど。
黄色・緑色の痰:細菌感染が疑われることが多い(肺炎・副鼻腔炎など)。ただしウイルス感染の回復期にも白血球の影響で黄色くなることがある。
血が混じる(血痰):肺がん・結核・気管支拡張症などの可能性もあるため、早めの受診が必要。

※ 痰の色だけで原因を断定することはできません。症状全体で判断します。

こんな症状は早めに受診してください
⚠ 受診の目安(Red Flags)
血痰・血が混じった痰が出る
息苦しさ・呼吸困難がある
高熱が続いている・解熱後に再び発熱した
体重が急に減ってきた
3週間以上咳が続いている
喫煙歴がある50歳以上の方で咳が増えてきた

これらの症状がある場合は、肺炎・肺がん・結核など重大な病気が隠れている可能性があります。市販の咳止めで様子を見ず、早めに内科を受診してください。

当院の診断・検査

咳の原因は問診と診察が最も重要です。「いつから」「どんな状況で悪化するか」「痰の有無・色」「喫煙歴」「服用薬」などをお聞きします。

胸部X線(レントゲン):肺炎・肺がんなど肺の異常を確認
血液検査:炎症の程度・アレルギー・感染の種類を確認
迅速検査:インフルエンザ・COVID-19などの抗原検査
酸素飽和度測定:肺炎や呼吸不全のチェック
胃カメラ(上部消化管内視鏡):逆流性食道炎が咳の原因と疑われる場合、食道・胃を直接確認できます

※ 必要に応じて、呼吸器専門医や耳鼻咽喉科への紹介も行います。

治療について

治療は原因によって大きく異なります。まず原因を正確に診断してから、適切な治療を選択します。

感染による咳(急性)

ウイルス感染(かぜ)の場合は抗生物質は効きません。咳を鎮める薬(鎮咳薬)や痰を出やすくする薬(去痰薬)で症状を和らげます。細菌性肺炎・百日咳が疑われるときは抗生物質を、インフルエンザと診断された場合は抗ウイルス薬を使用します。

感染後に長引く咳

気道の炎症や過敏性を鎮めるため、鎮咳薬・吸入薬・抗コリン薬などを状況に応じて使います。多くは数週間で改善しますが、咳喘息へ移行していることもあるため、改善がなければ再受診してください。

咳喘息・喘息

吸入ステロイド薬(ICS)や気管支拡張薬が有効です。適切な吸入薬を使えば多くの方が改善します。「自己判断で中止」すると再悪化しやすいため、症状がなくなっても継続することが大切です。

逆流性食道炎による咳

胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が有効です。胸やけがない場合でも効果が出ることがあります。当院では胃カメラと合わせた診断・治療が可能です。詳しくは逆流性食道炎のページもご覧ください。

後鼻漏(鼻水が喉に落ちる)・アレルギーによる咳

抗ヒスタミン薬や鼻の洗浄、マクロライド系抗生物質(少量長期投与)などが使われます。花粉症・アレルギー性鼻炎が背景にある場合は、アレルギーの治療と並行して行います。

自宅でできるケアのポイント
こまめな水分補給:痰を柔らかくして出やすくします。温かい飲み物が特に有効。
室内の加湿:乾燥した空気は気道を刺激します。湿度50〜60%を目安に。
禁煙・受動喫煙を避ける:タバコの煙は咳を悪化させ、回復を遅らせます。
逆流性食道炎の方:食後すぐ横にならない、就寝3時間前は食事を避ける、腹部を締め付けない服装を心がける。
マスクの着用:冷気や乾燥した空気は咳の誘因になるため、外出時・就寝時の着用が助けになることも。
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よくあるご質問(FAQ)
Q風邪が治ったのに咳だけが2〜3週間続いています。病院に行くべきですか?
A感染後に気道の炎症が残り、咳だけが続く「感染後咳嗽」はよくある状態です。多くは自然に改善しますが、3週間以上続く場合や日常生活に支障があるときは受診をおすすめします。咳喘息など別の原因に移行していることもあります。
Qコロナ(COVID-19)が治ったあとも咳が続くのはなぜですか?
ACOVID-19後に咳が長引く方は少なくありません。ウイルスによって気道の粘膜が傷ついて過敏な状態になったり、気道の炎症が続いたりすることが原因と考えられています。多くは数週間〜数か月で改善しますが、3か月以上続く場合は「罹患後症状(ロングCOVID)」として専門的な評価が必要です。
Q咳止め(市販薬)を飲んでも効かないのですが、なぜですか?
A咳の原因によっては市販の咳止めが効かないことがあります。咳喘息や逆流性食道炎による咳には、通常の鎮咳薬ではなく吸入薬や胃酸を抑える薬が必要です。2週間以上市販薬で改善しない場合は、一度受診して原因を調べることをおすすめします。
Q黄色い痰が出ます。抗生物質を飲んだほうがいいですか?
A黄色い痰は細菌感染の可能性がありますが、ウイルス感染の回復期にも白血球の影響で黄色くなることがあります。自己判断で抗生物質を服用するのは効果がない場合も多く、耐性菌の問題にもつながります。発熱が続く場合や症状が悪化する場合は受診してください。
Q咳が続くときに内科と呼吸器科、どちらに行けばよいですか?
Aまずは内科・総合内科への受診で問題ありません。問診・胸部レントゲン・血液検査などで多くの原因を特定できます。肺の精密検査や呼吸機能検査が必要と判断した場合は、呼吸器専門科へのご紹介も行っています。
Q咳で夜眠れません。楽な体位はありますか?
A上半身を少し高くして寝ると(枕などで15〜20cm程度持ち上げる)、逆流性食道炎・後鼻漏による咳を和らげることがあります。温かい飲み物を就寝前に少量飲むことも気道の潤いを保つ助けになります。それでも改善しない場合はご相談ください。
Q咳の予防に、ワクチンは役立ちますか?
A感染症による咳はワクチンで予防できるものもあります。インフルエンザワクチンは毎年秋冬の接種をおすすめします。肺炎球菌ワクチンも重症化予防に有効です。各種ワクチンのご相談も当院で承っています。

咳・痰が気になる方はお気軽にご相談ください

前川内科 三重県津市垂水南浦1425

この記事の監修・執筆者
前川内科 院長 前川 直志(まえがわ ただし)
日本内科学会認定 総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医
三重県津市にて、地域に根差した内科診療を行っています。本ページは日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版 2025」をはじめとする専門学会のガイドラインに基づき作成しています。
最終更新:2025年6月 参考:日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版 2025」