大腸ポリープ

 

大腸ポリープ|タイトルとポリープのイラスト

1. 大腸ポリープとは

大腸の粘膜が盛り上がってできた隆起性病変を「大腸ポリープ」と呼びます。

症状がないまま進行することが多く、自覚症状だけでは発見が困難です。そのため、定期的な検査(便潜血検査や大腸内視鏡検査)による早期発見が重要です。

大腸ポリープにはいくつかの種類があり、すべてが危険なわけではありません。ただし、「腺腫」や「鋸歯状病変(SSL)」と呼ばれるタイプは、将来がんに変化する可能性があるため、早期発見・早期切除ががん予防に直結します。

2. 大腸ポリープの種類

大腸ポリープは大きく「腫瘍性」と「非腫瘍性」に分かれます。がん化に注意が必要なのは腫瘍性のポリープです。

① 腺腫(アデノーマ)— 最も多いタイプ

大腸内視鏡で最もよく見つかるポリープです。時間をかけてがん化する可能性があります(adenoma-carcinoma sequence)。大腸がんの60〜70%はこの腺腫から発生すると考えられています。サイズが10mm以上になると癌化率が10〜25%に上昇します。

日本消化器病学会の「大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改訂第2版)」では、5mm以下の腺腫についても切除を推奨する方向に改訂されています。当院では、腺腫と診断した場合はサイズを問わず切除適応として対応しています。小さな腺腫でも確実に除去しておくことは、将来の大腸がん予防につながります。

② 鋸歯状病変(SSL / 鋸歯状腺腫) — 近年注目されているタイプ

以前は「過形成性ポリープ」として問題なしとされていましたが、近年の研究で一部のタイプ(Sessile Serrated Lesion:SSL)は大腸がん(特に右側結腸がん)の原因になることが明らかになりました。平らで白っぽく見えることが多く、見落としやすいため経験豊富な内視鏡医による観察が重要です。10mm以上のSSLは内視鏡的切除が強く推奨されています。

③ 過形成性ポリープ — 多くは良性

直腸・S状結腸にできる小さな(5mm以下)白っぽいポリープです。ほとんどはがん化リスクが極めて低く、経過観察となることが多いです。ただし大きなものや右側にあるものは切除対象になる場合があります。

⚠ ポイント:内視鏡による鑑別について

現在はNBI・BLI・LCIなどの画像強調観察(IEE)や拡大観察を組み合わせることで、腫瘍性・非腫瘍性の鑑別をはじめ、炎症性変化やがんの可能性も含めた病変の質的診断精度は大幅に向上しています。ほとんどのケースで術前に診断が可能ですが、まれに通常の内視鏡だけでは区別が難しい病変も存在します。そのため、切除したポリープは必ず病理検査(顕微鏡検査)を行い、最終的な確定診断を得ます。

3. 大腸ポリープの簡単な検査(便潜血検査)

大腸ポリープは症状が出ないことが多いです。

簡単な検査としては、便の中に血液が混じっていないかを調べる「便潜血検査(FOBT)」があります。市区町村の大腸がん検診でも広く使われています。

ただし、陽性・陰性の解釈には注意が必要です。

便潜血検査の陽性率グラフ(ポリープ・早期大腸がん・進行大腸がん別)
便潜血検査の陽性率:ポリープ・早期大腸がん・進行大腸がん別

陽性の場合:必ずしも大腸がんやポリープがあるとは限りませんが、大腸内視鏡検査で精密検査を受けることが重要です。

陰性の場合でも安心できないケースがあります:大腸ポリープがあっても便潜血検査が陰性になる確率は約70%あります。また大腸の早期がんでも約40%は陰性です。症状がある方や、家族歴がある方は、便潜血が陰性でも大腸内視鏡検査をご検討ください。

4. より確実な検査(大腸内視鏡検査)

大腸ポリープを見つける最も確実な方法は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。

細いカメラを肛門から挿入し、大腸全体の内腔を直接観察します。ポリープや大腸がんの発見だけでなく、そのまま切除まで行えることが大きな特徴です。

10mm程度までのポリープであれば、入院せずに内視鏡検査中にそのまま切除できます。腺腫の段階で切除することで、将来の大腸がん発症リスクを大幅に下げることができます。

大腸内視鏡検査を受けるには、事前に下剤を飲んで腸の中をきれいにする「前処置」が必要です。当院での詳しい検査の流れや費用については、大腸カメラのページをご覧ください。

5. ポリープ切除(コールドスネアポリペクトミー)

大腸ポリープはスネアや鉗子などを用いて切除することができます。

当院では、コールドスネアポリペクトミー(Cold Snare Polypectomy:CSP)を行っています。

コールドスネアポリペクトミー(CSP)の手順を示した解説図
コールドスネアポリペクトミー(CSP)による切除のイメージ
コールドスネアポリペクトミー(CSP)の特徴

電気(高周波電流)を一切使わず、金属製のスネア(輪)でポリープを機械的に絞り切る方法です。主に10mm未満の比較的小さなポリープに適応されます。

電気を使わないため、熱による組織ダメージが少ない
切除後に出血する可能性が極めて少ない
切除中・切除後に痛みはほとんどない
入院不要(日帰り)で対応可能
⚠ 切除当日のご注意

切除当日は激しい運動・アルコールは控えてください。入浴はシャワーまたは長湯を避けた入浴であれば可能です。食事については検査後に医師の指示に従ってください。

6. 切除後のサーベイランス(定期的な経過観察)

大腸ポリープを切除した後も、新たなポリープが生じる場合があります。そのため、切除後は定期的な大腸内視鏡検査(サーベイランス)が推奨されています。

サーベイランス間隔の目安

小さな腺腫が1〜2個の場合:3〜5年後が目安
多発している・大きな腺腫があった場合:1〜3年後が目安
鋸歯状病変(SSL)があった場合:切除サイズ・数によって医師が判断
※患者さんの状況や当院での検査内容によって変わります。検査後に医師から個別にご説明します。

大腸ポリープは切除しても新たに発生する可能性があります。「切除したから終わり」ではなく、定期的な観察を続けることが大腸がん予防の鍵です。

7. 無症状でも大腸カメラが勧められる方

血のつながった方に大腸がんの人がいる(家族歴がある)
大腸ポリープがあると言われたことがある
大腸ポリープを切除したことがある
大腸がんや胃がんの治療歴がある
便潜血検査が陽性だった
40歳以上で一度も大腸カメラを受けたことがない

特に40歳以降は大腸がんの発症率が上昇します。自覚症状がなくても、一度大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

8. 症状がある場合で大腸カメラが勧められる方

血便がある・便に血が混じったことがある
下痢が続く
便秘がある
便が細い・便の形が変わった
残便感がある
腹痛・お腹の張り・違和感がある
体重が減少している
貧血を指摘された

上記に当てはまる場合、大腸がんやポリープ以外の疾患(炎症性腸疾患・憩室炎など)の可能性もあります。早めにご相談ください。

9. よくある質問(FAQ)

Q大腸ポリープはすべてがんになりますか?
A いいえ、すべてがんになるわけではありません。がん化の可能性があるのは主に「腺腫」と「鋸歯状病変(SSL)」です。腺腫は10mm以上になると癌化率が10〜25%に上昇します。一方、直腸・S状結腸の小さな過形成性ポリープはがん化リスクが極めて低く、経過観察になることが多いです。
Q便潜血検査が陰性ならポリープはないですか?
A そうとは言えません。大腸ポリープがあっても便潜血検査が陰性になる確率は約70%あります。早期大腸がんでも約40%は陰性です。便潜血陰性でも、リスクがある方や症状がある方は大腸内視鏡検査の受診をご検討ください。
Qポリープ切除後はいつ再検査が必要ですか?
A 切除したポリープの大きさ・数・種類によって異なります。小さな腺腫1〜2個の場合は3〜5年後が目安、多発していた場合や大きなポリープがあった場合は1〜3年後が目安とされます。検査後に医師から個別にご説明します。
Qコールドスネアポリペクトミーとはどんな方法ですか?
A 電気(高周波電流)を使わず、金属製のスネア(輪)でポリープを機械的に絞り切る方法です。熱による組織ダメージが少なく、切除後の出血リスクが低いとされています。主に10mm未満の比較的小さなポリープに適応されます。
Qポリープ切除中や切除後に痛みはありますか?
A 大腸の粘膜には痛覚がほとんどないため、ポリープ切除中に痛みを感じることは基本的にありません。切除当日は激しい運動・飲酒・湯船への入浴は控えていただきます。
Qポリープが見つかったら必ず切除が必要ですか?
A すべてのポリープが切除対象になるとは限りません。大きさ・形・種類を総合して判断します。腺腫と診断した場合はサイズを問わず切除適応となることが多く、直腸・S状結腸の小さな過形成性ポリープは経過観察になる場合もあります。詳しくは医師にご相談ください。

大腸カメラを受けるかどうか悩む場合はお気軽にご相談ください

この記事の監修・執筆者 前川内科 院長:前川 直志 日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医

三重県津市にて、地域に根差した消化器内科・内視鏡診療を行っています。大腸ポリープの早期発見と切除(コールドスネアポリペクトミー)を通じて、地域の大腸がん予防に取り組んでいます。