胆石症
🫀 胆石症(胆のう・胆管の結石)について
⚠️ こんな方はぜひご確認ください
健診や腹部エコーで「胆石あり」と言われたが、症状はない
食後にみぞおちや右わき腹が痛むことがある
肥満・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病がある
40代以上の女性・出産経験がある方
急激なダイエット・断食を繰り返している
胆石症の家族がいる・過去に胆石と診断されたことがある
胆石とは、胆嚢(たんのう)や胆管にできた結石のことです。胆嚢はお腹の右上、肝臓の裏にくっついている袋状の臓器で、肝臓でつくられた胆汁(消化を助ける液体)を一時的にためておく役割があります。食事をすると胆嚢が収縮して胆汁を分泌し、十二指腸へと送り出します。この通り道を胆管といいます。
胆嚢内の石を胆嚢結石、胆管内の石を胆管結石(なかでも総胆管にあるものを総胆管結石)、肝臓内の胆管にある石を肝内結石と呼びます。これらをまとめて「胆石症」といいます。
📊 日本における胆石の頻度
胆石症の内訳は、胆嚢結石が約80%、総胆管結石が約20%、肝内結石が約2%と報告されています。日本人の胆石保有率は食生活の欧米化・高齢化とともに増加傾向にあり、胆石保有者は1993年の時点で人口の約10%(約1,000万人)に達したとされています。
胆石は大きくコレステロール石と色素石の2種類に分けられます。
コレステロール石(日本では約75%)
胆汁中のコレステロール濃度が高いとき、または胆嚢の動きが低下して胆汁が滞るときに、コレステロールが結晶化してできます。肥満・脂質異常症・女性ホルモンなどとの関連が深い石です。
色素石(ビリルビンカルシウム石・黒色石)
ビリルビンカルシウム石は細菌感染が原因とされ、胆管や肝内に多く見られます。黒色石は原因不明のものも多く、高齢者や溶血性疾患のある方に見られます。
コレステロール石ができやすい人の特徴は英語の頭文字をとって「5F」として知られています。
さらに以下のリスク因子も知られています。
脂質異常症・糖尿病・メタボリックシンドローム(胆汁中コレステロール濃度を高める)
急激なダイエット・長期絶食(胆嚢の収縮が減り、胆汁が濃縮されやすくなる)
高脂肪食・食物繊維の少ない食生活
経口避妊薬・ホルモン補充療法(女性ホルモンは胆汁のコレステロール濃度を高める)
胆道感染症・胆汁うっ滞(色素石のリスク)
長期の高カロリー輸液(中心静脈栄養)
胆嚢結石は約8割の方が無症状とされています。ただし症状が出た場合、以下のような状態を起こすことがあります。
⚡ 胆石発作(胆嚢疝痛)
胆石が一時的に胆嚢の出口に詰まることで痛みが起こります。みぞおちから右の肋骨の下あたりが中心で、食後数時間以内(特に脂肪分の多い食事の後)に起こりやすいです。強烈な痛みですが、石が戻ると自然に治まることがあります。
🔥 急性胆嚢炎
胆石が詰まったまま細菌感染が加わり、胆嚢に炎症が起きた状態です。痛みが持続し、発熱・悪心・嘔吐を伴います。自然には改善せず、抗菌薬やドレナージ・手術などの治療が必要になります。
総胆管は胆嚢より細いため、結石が詰まるとより重篤な合併症を引き起こします。ガイドラインでは、症状の有無にかかわらず治療が推奨されています。
⚡ 閉塞性黄疸・胆管炎
右上腹部痛・発熱・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が同時に現れる場合(シャルコーの三徴)は急性胆管炎を強く疑います。重症化すると敗血症・ショック状態に至ることもあります。
🔥 胆石性膵炎
総胆管結石が膵管の出口をふさぐことで急性膵炎を引き起こします。へそより少し上あたりの帯状の強い痛みが特徴です。重症例では命に関わることがあります。
一度でも症状が出た場合は再発リスクが高いため、炎症が落ち着いたタイミングで胆嚢摘出術が推奨されます(ガイドライン推奨グレードB)。
腹腔鏡下胆嚢摘出術(第一選択)
お腹に1cm程度の穴を3〜4か所あけ、カメラと鉗子を使って胆嚢を取り出す手術です。現在の主流であり、傷が小さく回復が早いのが特徴です。
開腹手術
炎症が強い場合・癒着が高度な場合などは開腹手術となることがあります。
急性期の対応(胆嚢炎・胆管炎・膵炎を合併した場合)
まず抗菌薬投与やドレナージ(胆嚢・胆管の減圧)で炎症を鎮めてから、落ち着いた時期に手術を行います。重症例では緊急手術が必要になることもあります。
薬物療法(胆石溶解療法・補助的選択肢)
ウルソデオキシコール酸(UDCA)は一定の条件(コレステロール石で胆嚢機能が保たれている場合)のコレステロール石に有効ですが、効果が出るまでに年単位かかり、再発もあるため補助的な治療です。手術が困難な高齢者などに選択されることがあります。
✅ 胆嚢を摘出しても大丈夫?
胆嚢を取り除いても、胆汁は肝臓から直接十二指腸へ流れるため、食事制限は基本的に不要で、日常生活に支障はありません。胆嚢を摘出すれば胆嚢内の結石再発はありません(胆管内の石は別です)。
無症状の胆嚢結石は、多くの場合そのまま症状が出ないため、基本的には経過観察です。ただし、以下の点に注意が必要です。
胆嚢がんとの関連:胆石症と胆嚢がんの因果関係は明確ではありませんが、胆嚢がん患者の多くに胆石が認められます。腹部エコーによる定期的な経過観察が勧められます。
胆嚢壁の肥厚・石灰化(磁器様胆嚢)・胆嚢萎縮を伴う場合は、がんリスクが高まることがあり、手術を検討します。
⚠️ 無症状の総胆管結石は治療が必要
胆管結石(特に総胆管結石)は、無症状であっても急性胆管炎・急性膵炎を突然引き起こして重症化するリスクがあります。ガイドラインでは無症状の総胆管結石でも結石除去が推奨されています。内視鏡(ERCPを用いた結石除去術)または外科手術が選択されます。
胆石症の診断には主に腹部超音波検査(腹部エコー)が用いられます。被ばくがなく、痛みもなく、費用が安価で繰り返し行えるため、最初の検査として最も広く使われています。
腹部超音波検査(腹部エコー)【第一選択】
お腹にゼリーを塗り、プローブ(探触子)をあてて内部を観察します。胆石は白く輝いて映り、その後ろに黒い影(音響陰影)が出るのが特徴です。体位を変えると石が動くことも確認できます。
CT検査
石灰化した石の検出や炎症の広がり、合併症の評価に有用です。コレステロール石はCTに映りにくい場合もあります。
MRI / MRCP(磁気共鳴胆管膵管撮像)
胆管・膵管を立体的に描出でき、総胆管結石や肝内結石の診断に特に有用です。放射線被ばくがありません。
EUS(超音波内視鏡検査)
胃カメラのように内視鏡を挿入し、先端の超音波装置で胆嚢・胆管を至近距離から観察します。エコーやCT・MRCPで確認できない小さな総胆管結石の診断に優れています。
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)
診断と治療を同時に行える内視鏡です。総胆管結石が確認された場合はそのまま結石除去(内視鏡的結石除去術)を行えます。
🔬 前川内科では腹部エコー検査を行っています
健診で「胆石」「胆嚢ポリープ」「胆嚢壁肥厚」などを指摘された方、食後の右上腹部痛が気になる方は、ぜひ当院にご相談ください。必要に応じて専門医・専門機関へのご紹介も行います。
健診の腹部エコーで「胆嚢に何かある」と指摘された場合、それが胆石なのかポリープなのかを混同されることがよくあります。両者は全く性質が異なります。
見え方
経過観察
胆嚢ポリープの種類について詳しく説明します。約90%はコレステロールポリープという良性で、コレステロールが胆嚢壁に沈着したものです。悪性化することはほぼありません。一方、腺腫は一部が胆嚢がんへ進展する可能性があり、サイズが大きいほどリスクが高まります。
⚠️ こんなポリープは精密検査が必要です
大きさが10mm以上のポリープ
経過観察中に増大傾向があるもの
根元が広い(広基性)ポリープ・胆嚢壁の肥厚を伴うもの
腫瘍マーカー(CA19-9・CEAなど)の上昇を伴う場合
💡 胆石とポリープが同時に見つかることも
胆石と胆嚢ポリープが同じ胆嚢内で合併することがあります。エコーだけでは両者の鑑別が難しい場合もあり、EUS(超音波内視鏡)や造影CTで詳しく調べることがあります。どちらの場合も定期的なフォローアップが大切です。
胆石症は生活習慣と深く関わっています。以下を心がけることが予防につながります。
適正体重の維持:急激なダイエットや長期の断食は避ける(胆嚢の動きが低下し胆汁が濃縮される)
規則的な食事:1日3食、決まった時間に食べることで胆嚢が規則的に収縮する
脂質の過剰摂取を控える:コレステロールの多い食品(動物性脂肪・揚げ物)を摂りすぎない
食物繊維を積極的に摂る:野菜・豆類・海藻などはコレステロールの吸収を抑える
アルコール・香辛料の過度な摂取を避ける
生活習慣病(糖尿病・脂質異常症・高血圧)の管理:内科での定期的な治療・検査を続ける
腹部エコー検査を定期受診:早期発見・早期対応が重要です
この記事の監修・執筆者
前川内科 院長:前川 直志
日本消化器病学会 消化器病専門医 日本肝臓学会 肝臓専門医
三重県津市にて、地域に根ざした消化器内科・肝臓疾患の診療を行っています。








