肝機能障害について
肝機能障害について|前川内科
肝機能障害について
原因・検査・治療をわかりやすく
「血液検査で肝臓の数値が高い」と言われたあなたへ。専門医が原因から対処法まで丁寧に解説します。
肝臓は私たちの体の中で最も大きな臓器のひとつで、体の「化学工場」とも言える重要な役割を担っています。 しかし肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、異常があっても症状が出にくい臓器です。健康診断の血液検査で初めて異常が発覚することも少なくありません。 このページでは、肝臓の働き・血液検査の見方・異常値の原因・検査・治療について、できるだけわかりやすくお伝えします。「数値が高かったけどどうすればいいの?」と思っている方の参考になれば幸いです。 肝臓はおよそ500種類以上の働きをしているといわれています。主な機能を4つにまとめると次のとおりです。 アルコールや薬など体に有害な物質を分解・無害化して体の外に排出します。いわば体の「浄水器」です。 食事で摂ったたんぱく質・炭水化物・脂肪をエネルギーや必要な物質に変換します。血糖値の調整にも深く関わります。 血液の中で止血に働く凝固因子や、血液中に水分を保つアルブミンなど、体に必要なタンパク質をつくります。 脂肪や脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の消化・吸収を助ける胆汁をつくり、腸に送り出します。 健康診断の結果でよく見かける「肝機能」の検査項目について、何を意味するのかをまとめました。 肝機能障害はさまざまな原因で起こります。原因によって治療法が異なるため、何が原因かを調べることが最初のステップです。 B型・C型肝炎ウイルスは血液を介して感染し、肝臓に炎症を起こします。長期間放置すると肝硬変や肝がんに進行するリスクがあります。近年は有効な治療薬が増え、C型肝炎はほぼ治癒できるようになっています。 長期間の過度な飲酒は、肝臓に脂肪を蓄積させ(アルコール性脂肪肝)、さらに炎症(アルコール性肝炎)や肝硬変へと進行することがあります。γGTPが特に高い場合、アルコールの影響が考えられます。 お酒を飲まない方でも、肥満・糖尿病・脂質異常症などで脂肪肝になることがあります(MASLD)。進行してMASH(代謝機能障害関連脂肪性肝炎)になると、肝硬変・肝がんのリスクが高まります。 抗生物質・解熱鎮痛薬・抗がん剤などの処方薬のほか、市販の痛み止めや健康食品・サプリメントでも肝障害が起きることがあります。何か薬やサプリを飲んでいる場合は必ず医師に伝えてください。 自分の免疫が誤って肝臓を攻撃してしまう「自己免疫性肝炎」や「原発性胆汁性胆管炎(PBC)」などがあります。ステロイドなどによる治療が有効なことがあります。 胆のうや胆管に石ができると、胆汁の流れが妨げられ、肝臓にも影響が出ます。ALP・γGTPが特に上がる場合は胆道系の問題を疑います。 肝細胞がん(原発性)や他の臓器からの転移(転移性肝がん)が肝機能に影響することがあります。超音波検査やCTなどの画像検査で確認します。 ヘモクロマトーシス(鉄の過剰蓄積)やウィルソン病(銅の過剰蓄積)など、遺伝的な異常が肝障害を引き起こすことがあります。若い方や家族歴のある方で疑われることがあります。 門脈(肝臓への血管)の圧が上がる「門脈圧亢進症」や、肝静脈が詰まる「バッド・キアリ症候群」など、血管の問題でも肝機能が低下することがあります。 長期間の栄養不足や急激な体重減少は、肝臓の代謝や修復に必要なタンパク質・ビタミンが不足して肝機能を低下させることがあります。 肝機能の数値が高かった場合、原因を調べるためにさまざまな検査が行われます。主な検査を3つのカテゴリーに分けてご紹介します。 肝機能障害の治療は原因によって異なります。同時に、生活習慣の見直しは多くの場合に有効です。 ウイルス性肝炎には抗ウイルス薬、自己免疫性肝炎にはステロイドなど、原因を特定してから治療を行うことが重要です。自己判断で放置せず、専門医への相談をお勧めします。 アルコール性肝障害や脂肪肝では、飲酒量を減らすだけで数値が改善することがあります。飲みすぎが気になる方は、週に2日以上の「休肝日」をつくりましょう。 バランスよく食べ、揚げ物や糖質の多い食事を控えましょう。肥満や糖尿病による脂肪肝の場合、体重を5〜10%減らすだけで肝臓の数値が改善することがあります。 有酸素運動(ウォーキング・軽いジョギングなど)は脂肪肝の改善に効果的です。週150分以上(1日30分×5回)を目標にしましょう。 B型肝炎はワクチンで予防できます。接種歴のない方や免疫が不十分な方には接種をお勧めしています。 肝臓の病気は症状が出にくいため、定期的な血液検査・超音波検査による経過観察が大切です。異常が見つかったら早めに受診しましょう。 肝臓病の診断・治療は近年大きく進歩しています。患者さんにも知っておいていただきたい、新しい考え方や検査・治療の知見をご紹介します。 これまで「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」と呼ばれていた病気は、2023年から国際的に「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」「MASH」という名称に改められました。お酒を飲まなくても、肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧などの生活習慣病が背景にある脂肪肝が対象です。健診で「脂肪肝」と言われた方の多くがこれにあてはまり、放置すると肝硬変・肝がんへ進展するリスクがあるため、早期からの管理が重要です。 腸と肝臓は門脈という血管でつながっており、腸内細菌のバランスが乱れると(腸内フローラの乱れ)、有害な物質が肝臓に流れ込み、炎症や脂肪肝を悪化させることが近年の研究でわかってきました。食物繊維・発酵食品(納豆・ヨーグルトなど)を積極的にとり、腸内環境を整えることが、肝臓の健康にもよい影響を与えると考えられています。 筋肉量が低下する「サルコペニア」は、肝臓病の進行や肝硬変の合併症リスクを高めることが明らかになっています。特に高齢の方や食事量が少ない方では注意が必要です。有酸素運動に加えて、たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品)をしっかりとることが、肝臓と筋肉の両方を守ることにつながります。「肝臓に悪いから食事を控える」という過度な食事制限は逆効果になる場合があります。 近年、健康食品・ダイエットサプリ・プロテイン・漢方薬などによる薬物性肝障害の報告が増加しています。「自然素材だから安心」は誤りで、特定の成分が肝臓に強い負担をかけることがあります。サプリを飲み始めてから肝機能の数値が悪化した場合は、一時中止して医師に相談することをお勧めします。 最終更新:2026年4月|前川内科(三重県津市)1.はじめに
2.肝臓の主な機能
① 解毒作用
② 栄養素の代謝
③ タンパク質の合成
④ 胆汁の生成
3.肝機能の血液検査の見方
検査項目
どこにある?
高くなるとき(主な原因)
特徴
AST
(GOT)肝臓・心臓・筋肉など
肝臓の炎症・損傷、心筋梗塞、激しい運動後
肝臓だけでなく全身の細胞ダメージの指標にもなります
ALT
(GPT)主に肝臓
肝炎、脂肪肝、アルコール性肝障害
ASTより肝臓の炎症・障害を敏感に反映します
γGTP
肝臓・胆道・膵臓
アルコールの飲みすぎ、胆道疾患、脂肪肝
お酒をよく飲む方では特に上がりやすい指標です
ALP
肝臓・胆道・骨・腎臓
胆汁の流れが滞る病気(胆石など)、骨の病気
成長期・妊娠中も高くなることがあります
LDH
全身の組織
肝炎、心筋梗塞、溶血性貧血、悪性腫瘍など
全身のさまざまな病気で上がるため、他の検査と合わせて判断します
ビリルビン
赤血球の老廃物
肝機能障害、胆道の閉塞(胆石・胆管癌など)
高くなると皮膚や白目が黄色くなる「黄疸」が出ます
4.肝機能障害の主な原因
1ウイルス感染(B型・C型肝炎など)
2アルコール(飲みすぎ)
3脂肪肝(非アルコール性も含む)
4薬剤性肝障害
5自己免疫疾患
6胆石・胆管結石
7肝腫瘍(肝臓のがんなど)
8遺伝的疾患
9肝臓の血管障害
10栄養不良・極端なダイエット
5.原因を調べるための検査
6.肝機能の治療と予防
原因に応じた適切な治療
節酒・禁酒
食事と体重管理
適度な運動
予防接種(B型肝炎など)
定期的な検査と経過観察
7.知っておきたい最新の知見
「脂肪肝」の新しい呼び方:MASLD(マスルド)
腸内細菌と肝臓病の関係(腸肝連関)
筋肉量の低下(サルコペニア)と肝臓病
健康食品・サプリメントによる肝障害が増加しています
日本肝臓学会 専門医(肝臓専門医)
当院では肝機能異常・肝臓病の診療を行っております。血液検査の異常を指摘された方、肝臓について気になることがある方は、お気軽にご相談ください。








