脂肪肝

 

脂肪肝について
1脂肪肝とは

肝臓は本来、少量の脂肪を含んでいますが、肝細胞全体の5%以上に中性脂肪が沈着した状態を「脂肪肝」といいます。正式には「脂肪性肝疾患(Steatotic Liver Disease)」と呼ばれ、軽度のものから肝硬変・肝不全へと進行するケースまで幅広い病態を含みます。

💡 ポイント

脂肪肝は自覚症状がほとんどなく、血液検査や腹部エコー(超音波検査)で初めて見つかることがほとんどです。「健診で肝機能が高いと言われた」「お腹のエコーで脂肪肝と言われた」という方は、放置せず受診しましょう。

2脂肪肝の原因

脂肪肝(SLD:脂肪性肝疾患)はその原因によって、以下の3つに大きく分類されます。

🍺 アルコール性(ALD)

過剰な飲酒によって肝臓での脂肪合成が増加し蓄積します。純アルコール換算で男性60g/日以上(ビール中瓶3本程度)が目安とされますが、個人差があります。

🍎 代謝異常性(MASLD)

現在最も多い脂肪肝で、以下の代謝異常のいずれか1つ以上を伴う場合にMASLDと診断されます。

肥満(BMI 23以上、または腹囲 男性94cm超・女性80cm超)
高血糖(空腹時血糖100mg/dL以上・HbA1c 5.7%以上・糖尿病治療中)
高血圧(130/85mmHg以上、または治療中)
高中性脂肪血症(150mg/dL以上、または治療中)
低HDLコレステロール血症(男性40mg/dL以下・女性50mg/dL以下、または治療中)
📌 その他の原因(Specific/Cryptogenic SLD)

上記以外の原因による脂肪肝で、MASLDとは別カテゴリーに分類されます。

甲状腺機能低下症・下垂体機能低下症などのホルモン異常
特定の薬剤(ステロイド・タモキシフェンなど)
低栄養・極端なダイエット・急激な体重減少
Wilson病などの代謝性疾患

※ 日本消化器病学会・日本肝臓学会は2023年にNAFLDからMASLDへの病名変更を承認。診断基準(心代謝系危険因子)は2026年2月に国際基準(EASL/AASLD)への統一が正式決定されました。

3アルコール性と非アルコール性の違い
アルコール性脂肪肝(ALD)
非アルコール性脂肪肝(MASLD)
主な原因
過剰な飲酒
糖尿病・肥満・脂質異常症など
飲酒習慣
あり
なし(または少量)
進行リスク
禁酒で改善しやすい
生活習慣改善が重要
注意点
飲酒継続で急速に悪化
自覚症状なく進行しやすい

※ MASLD(Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease)は、以前「NAFLD/NASH」と呼ばれていた病態の新しい国際名称です(2023年改称)。

4症状・気づきにくい理由

脂肪肝は「沈黙の病気」とも呼ばれ、ほとんどの場合、自覚症状がありません。まれに右わき腹の違和感・倦怠感・疲れやすさを訴える方もいますが、明確な痛みや黄疸が出る頃には病状が進んでいることもあります。

⚠️
健診で見つかることが多い
肝機能検査(AST・ALT・γ-GTP)の数値上昇、または腹部エコーで指摘される
⚠️
進行すると症状が出る
肝炎・肝硬変に進展すると、倦怠感・黄疸・腹水・むくみなどが現れます
5頻度と合併症

医療機関を受診した方の約30%に、画像で確認できる脂肪肝がみられるといわれており、年々増加しています。脂肪肝の方の70%以上に肥満(BMI≧25)を伴い、メタボリックシンドロームとの合併率も高いです。

脂肪肝の肝臓イラスト
STAGE 1
脂肪肝
肝細胞に中性脂肪が蓄積した状態。この段階では生活習慣の改善で回復が見込めます。
改善できます
放置・悪化
脂肪性肝炎の肝臓イラスト
STAGE 2
脂肪性肝炎(MASH)
炎症が加わり、線維化が始まる。自覚症状は少ないが、肝障害が進行している。
要注意
線維化の進行
肝硬変の肝臓イラスト
STAGE 3
肝硬変
肝臓が硬く小さくなる。腹水・黄疸・むくみが現れることも。20年以内に5〜20%が進行。
20年で5〜20%
悪性化
肝細胞癌・肝不全の肝臓イラスト
STAGE 4
肝細胞癌・肝不全
生命予後に関わる重篤な状態。定期的な検査による早期発見が重要です。
生命に関わる
脂肪肝が引き起こすリスク(肝臓以外)
❤️
心血管疾患
心筋梗塞・脳卒中のリスクが上昇
🦪
慢性腎臓病
腎機能低下のリスクが高まる
💉
糖尿病
インスリン抵抗性が悪化しやすい
🧪
脂質異常症
中性脂肪高値・HDL低値が続く
6診断方法

脂肪肝の診断には、主に以下の検査を行います。

血液検査(肝機能・脂質・血糖)
AST・ALT・γ-GTP・中性脂肪・空腹時血糖・HbA1cなどを確認します。
腹部エコー(超音波検査)
痛みなく短時間で脂肪の沈着程度を評価できる最もよく使われる検査です。
腹部エコーについて詳しくはこちら →
腹部CT・MRI
より詳細な評価が必要な場合に行うことがあります。
肝生検(組織検査)
炎症・線維化の程度を正確に評価するため、専門施設で行う場合があります。
7治療・改善のポイント

脂肪肝の治療の中心は生活習慣の改善です。薬よりも食事・運動の見直しが最も効果的であることがわかっています。

🥬
食事療法
総カロリーを適切に管理する
糖質・脂質の過剰摂取を控える
果糖(清涼飲料水・果汁)を減らす
食物繊維・野菜を積極的に摂る
飲酒量を減らす・禁酒
🚶
運動療法
有酸素運動(ウォーキング・水泳など)を週3〜5回、1回30分以上が目標
体重の5〜10%減少で肝臓の脂肪が有意に減少
筋力トレーニングも効果的
💊
合併症の治療
糖尿病・脂質異常症・高血圧症を同時に管理する
これらを改善することが脂肪肝そのものの改善にもつながる
📌 当院での対応

当院では血液検査・腹部エコーによる脂肪肝の診断・経過観察を行っています。糖尿病・脂質異常症・高血圧症など生活習慣病の管理も合わせて行いますので、お気軽にご相談ください。

9よくある質問
監修・執筆
前川内科 院長
前川 直志
日本消化器病学会 専門医 日本肝臓学会 専門医
前川内科|三重県津市垂水南浦1425