メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の過剰な蓄積を基盤として、高血圧・高血糖・脂質異常が重なり合った状態です。それぞれの数値は「少し高いだけ」でも、複数が重なることで心筋梗塞・脳梗塞・腎不全など命に関わる病気のリスクが急激に高まります。自覚症状がないまま進行するため、定期的な検査と早めの対処が大切です。
40〜74歳の男性 約2人に1人 メタボまたはその予備群に該当(厚生労働省 特定健診データ・令和4年)
40〜74歳の女性 約5人に1人 メタボまたはその予備群に該当(同上)

メタボリックシンドロームの診断基準

日本独自の診断基準(2005年・日本内科学会ほか8学会合同)が使用されています。

必須腹囲(内臓脂肪の蓄積)

※ 内臓脂肪面積100㎠以上に相当する基準です

男性85 cm 以上
女性90 cm 以上

内臓脂肪は皮下脂肪よりもインスリン抵抗性や炎症を引き起こす物質(アディポサイトカイン)を分泌しやすく、生活習慣病との関連が特に強いとされています。

選択下記 ①②③ のうち、2つ以上に該当すれば確定診断
① 脂質異常 どちらか一方、または両方 ・中性脂肪(トリグリセリド):150 mg/dL 以上
または
・HDLコレステロール(善玉):40 mg/dL 未満
善玉コレステロールが減り中性脂肪が増えると、血管壁にプラーク(脂肪の塊)が溜まりやすくなります。
② 高血圧 どちらか一方、または両方 ・収縮期血圧(最高):130 mmHg 以上
または
・拡張期血圧(最低):85 mmHg 以上
慢性的な高血圧は血管壁の弾性を失わせ、動脈瘤・血管破裂のリスクを高めます。
③ 高血糖 ・空腹時血糖:110 mg/dL 以上 高血糖が続くと血管壁が直接傷つき、目・腎臓・神経などに合併症を引き起こします。
ℹ 薬物治療中の方へ 高中性脂肪・低HDL・高血圧・高血糖に対して薬物治療中の場合も、それぞれの選択項目に該当します。糖尿病・高コレステロール血症と診断済みの方もメタボリックシンドロームの診断から除外されません。
💡 「痩せメタボ」にも注意 BMIが正常範囲でも、運動不足や食生活の乱れにより内臓脂肪が多く数値が悪化している「隠れメタボ」の状態になることがあります。見た目だけで安心せず、定期的な血液検査と腹囲測定が大切です。

腹囲の正しい測り方

腹囲はご自宅でも簡単に測定できます。以下の手順で正確に測りましょう。

1立位で、力を抜いてまっすぐに立ちます。
2軽く息を吐いた状態で測ります。息を吸って止めたまま測らないようにしましょう。
3メジャーをおへそのレベルに水平に巻きます。斜めにならないよう注意しましょう。
4おなかの脂肪が多くておへそが下にずれている場合は、一番下のあばら骨と腰の横に触れる骨の出っ張りの、ちょうど中間の高さで測ります。
5メジャーは皮膚に軽く当てる程度にし、強く締め付けないようにしましょう。

※ 健診でも腹囲測定は実施されます。数値が気になる方はお気軽にご相談ください。


なぜ「腹囲(内臓脂肪)」が問題なのか

内臓脂肪(おなか深部にある脂肪)は、皮下脂肪とは異なり代謝が非常に活発です。

皮下脂肪より炎症を促す物質(アディポサイトカイン)を多く分泌する
インスリンの効きを悪くし(インスリン抵抗性)、血糖値が上がりやすくなる
血圧を上昇させ、脂質の代謝を乱す
一方で「つきやすく、落としやすい」特徴があり、食事・運動で比較的早く改善できる

放置するとどうなるか? 主な合併症

メタボリックシンドロームの各リスク因子は互いに血管へのダメージを積み重ね、さまざまな深刻な病気につながります。

動脈硬化の加速 血管壁にプラーク(脂肪の塊)が蓄積し、血管が硬く狭くなります。多くの合併症の共通した土台となります。
心血管疾患(狭心症・心筋梗塞) 冠動脈が詰まり心臓への血流が途絶えます。メタボ該当者は健康な方と比べてリスクが大幅に高まるとされています。
脳血管疾患(脳梗塞・脳出血) 脳の血管が詰まる・破れることで、麻痺・言語障害などの深刻な後遺症を残す場合があります。
慢性腎臓病(CKD)・腎不全 腎臓の細い血管がダメージを受け長期的に機能が低下します。進行すると人工透析が必要になる場合があります。
2型糖尿病の発症・悪化 インスリン抵抗性の高まりにより血糖値のコントロールが難しくなり、糖尿病の発症・悪化につながります。

治療・改善のアプローチ
✅ 現体重の3〜5%の減量で数値が大きく改善 内臓脂肪は皮下脂肪に比べて減らしやすい脂肪です。体重の3〜5%を落とすだけでも血圧・血糖・中性脂肪の数値が改善することが確認されています。(例:体重70kgの方なら約2〜3.5kgの減量が目安)
食事療法のポイント
摂取エネルギーの適正化食べすぎを避け、炭水化物60%・脂質20〜25%・たんぱく質15〜20%のバランスを目安にします。
食塩を控える1日10g以下(中性脂肪が高い場合は6g以下)を目標に減塩を心がけます。
食物繊維を増やすこんにゃく・キノコ・野菜・海藻などは血糖値の急上昇を抑え腸内環境も整えます。
肉より魚・大豆製品を積極的に魚のEPA・DHAは中性脂肪を下げ動脈硬化を防ぐ働きがあります。
過度な飲酒を控えるアルコールは中性脂肪を増やす大きな要因です。男性20g/日・女性10g/日以下を目安に。
運動療法のポイント
有酸素運動を中心にウォーキング・水泳・軽いジョギングなど、週3〜5回・1回30分以上が目標です。内臓脂肪は有酸素運動で特によく燃焼されます。
筋力トレーニングの併用スクワット・腹筋などを週2回程度加えると基礎代謝が上がりリバウンドを防ぎます。
日常活動量を増やす階段利用・近距離の徒歩など、生活の中の「ちょい動き」の積み重ねも有効です。
薬物療法について

生活習慣の改善が基本ですが、数値が著しく高い場合や心血管リスクが高い場合は、高血圧・脂質異常・血糖に対する薬物治療を組み合わせます。薬物治療中でも生活習慣の改善を継続することが重要です。


よくある質問
Qメタボリックシンドロームと肥満は同じですか?
A異なります。メタボリックシンドロームは「内臓脂肪の蓄積」に加えて、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上が重なった状態です。見た目が太っていなくても(いわゆる「痩せメタボ」)、数値が悪ければ該当する場合があります。逆に、腹囲が基準を超えていても選択項目が1つ以下であれば「予備群」となります。
Q薬を飲んでいれば生活習慣の改善は不要ですか?
Aいいえ、薬を飲んでいても生活習慣の改善は欠かせません。薬はリスクを抑える補助的な役割であり、内臓脂肪そのものを減らすのは食事と運動です。生活習慣の改善なしに薬だけに頼ると、薬の量が増える・効果が出にくくなる可能性があります。
Qどのくらい体重を落とせば数値が改善しますか?
A現体重の3〜5%の減量でも、血圧・血糖・中性脂肪の改善が期待できます。体重70kgの方なら2〜3.5kgが目安です。急激なダイエットは筋肉を落として逆効果になることがあるため、食事と運動をバランスよく組み合わせた無理のない方法で取り組みましょう。
Q腹囲の基準が男女で異なるのはなぜですか?
A日本人女性は男性と比べて、同じ腹囲でも内臓脂肪面積が少ない傾向があるためです。いずれも内臓脂肪面積100㎠以上に相当する値として設定されています。腹囲が基準値以下でも生活習慣病のリスクが気になる方は、血液検査などでご確認いただくことをお勧めします。
Qメタボと診断されたら受診が必要ですか?
Aはい、受診をお勧めします。メタボリックシンドロームは自覚症状がないまま血管へのダメージが蓄積します。早期に医師の指導のもとで生活習慣の改善に取り組むことが、心筋梗塞や脳梗塞の予防につながります。健診でメタボや予備群を指摘された方は、お気軽に当院へご相談ください。

📋 特定健診(メタボ健診)について 40〜74歳の方を対象に、医療保険者(職場の健康保険組合・国民健康保険など)が特定健康診査(特定健診)を実施しています。メタボリックシンドロームのリスクを早期に発見するための検査です。当院でも特定健診を実施しておりますので、ご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
健診でメタボを指摘された方・数値が気になる方は、
お気軽に前川内科にご相談ください。