消化器がん
消化器がんの早期発見
― 胃がん・大腸がん ―
消化器がんとは、食べ物の通り道や消化に関わる臓器にできるがんの総称です。食道・胃・大腸(結腸・直腸)・肝臓・胆道(胆のう・胆管)・膵臓(すいぞう)などにできるがんが含まれます。
これらのうち、日本人でとくに多いのが胃がんと大腸がんです。どちらも胃カメラ・大腸カメラ(内視鏡検査)で早期に発見できるのが大きな特徴で、早く見つけることで体への負担の少ない治療につなげられます。
このページでは、日本人に多い胃がん・大腸がんを中心に、最新の情報をもとに、原因・症状・早期発見の大切さをわかりやすくご説明します。
以下は現時点での最新統計に基づく数値です。国立がん研究センターの統計によると、日本では生涯で何らかのがんに罹患する確率は、男性・女性とも約2人に1人(すべてのがんを合わせた割合)とされています。その中でも、新たにがんと診断される人の数(罹患数)を部位別にみると、大腸がんは第1位、胃がんも上位を占めており、いずれも日本人にとって身近ながんです。
大腸がんの年間罹患数
約15万人/年
部位別で罹患数 第1位
胃がんの年間罹患数
約11万人/年
部位別で罹患数 上位
2024年のがん死亡数(厚生労働省・人口動態統計)でも、大腸がんは女性で死亡数第1位、男性で第2位と、命に関わる大きな問題となっています。胃がんも引き続き死亡数の上位に位置しています。
これだけ多いがんですが、見方を変えれば、胃カメラ・大腸カメラを定期的に受けることで、多くの方が早期発見の機会を得られるということでもあります。
がんは、見つかった時点でどれだけ進行しているか(ステージ)によって、治る見込みが大きく変わります。下の表は、胃がん・大腸がんのステージ別の5年相対生存率※です。
| 進行度(ステージ) | 胃がん | 大腸がん |
|---|---|---|
| ステージⅠ(早期) | 約95% | 約95% |
| ステージⅡ | 約68% | 約88% |
| ステージⅢ | 約46% | 約77% |
| ステージⅣ(進行) | 約9% | 約18% |
※5年相対生存率:がんと診断された人が5年後に生存している割合を、他の死因の影響を除いて示した指標(全国がんセンター協議会・国立がん研究センターのデータに基づく概数)。
早期発見が「治る」と「治らない」を分けます
胃がん・大腸がんとも、ステージⅠで見つかれば5年生存率は約95%と非常に良好です。早期であれば、外科手術をせず内視鏡だけで切除し、胃や大腸を残せることも多くあります。
ところが進行してから見つかると生存率は大きく下がり、体への負担が大きい治療が必要になります。早期がんはほとんど症状が出ないため、「症状が出てから」では遅いことも少なくありません。
だからこそ、症状のないうちからの定期的な検査が大切なのです。
胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞ががん化して発生します。早期にはほとんど自覚症状がなく、進行すると、みぞおちの痛み・不快感、食欲不振、体重減少、黒い便(タール便)、貧血などが現れることがあります。
リスクを高めるもの
🔴 ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染……胃がんの最大の原因とされています
🔴 喫煙
🟠 塩分の多い食事・塩辛い食品の摂りすぎ(漬物・塩辛・干物など)
🟠 過度の飲酒
🟠 野菜・果物の不足
大切なポイント
🟢 ピロリ菌に感染している方は、除菌治療によって将来の胃がんリスクを下げることが期待できます。胃カメラで慢性胃炎が確認されれば、保険適用でピロリ菌検査・除菌治療を受けられます。
早期胃がんは胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で発見でき、見つかったがんが早期であれば、内視鏡だけで切除して胃を残せることもあります。気になる症状がある方、ピロリ菌感染を指摘されたことがある方、これまで一度も胃カメラを受けたことがない方は、ぜひ一度ご相談ください。
大腸がんは、大腸(結腸・直腸)の粘膜にできるがんで、日本人の罹患数が最も多いがんです。多くは大腸ポリープ(腺腫)から数年かけてがん化すると考えられており、ポリープのうちに見つけて切除することで、がんそのものを予防できる場合があります。
一方で、ポリープを経ずに、正常に見える粘膜から直接発生すると考えられる「de novo(デノボ)がん」と呼ばれるタイプもあります。de novoがんは、わずかにくぼんだ陥凹型など平坦で見つけにくい形のことが多く、小さくても早い段階から進行(悪性度が高い)することがあるため、通常のポリープ以上に、より早期の段階での内視鏡による発見が重要です。当院ではBLI・LCIなどの画像強調観察に加え、病変を拡大して詳しく観察できる拡大内視鏡も用いて、こうした見つけにくい病変の発見・診断にも努めています。
大腸がんは、早期にはほとんど症状がありません。進行すると、血便・下血、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、お腹の張りや痛み、貧血、体重減少などの症状が現れることがあります。
リスクを高めるもの(科学的根拠あり)
🔴 喫煙……「確実な」リスク因子です
🔴 過度の飲酒……「確実な」リスク因子です
🟠 肥満……リスク増加は「ほぼ確実」とされています
🟠 運動不足
🟠 加工肉・赤肉の摂りすぎ
リスクを下げる可能性があるもの
🟢 適度な運動……結腸がんの予防に「ほぼ確実」な効果
🟢 食物繊維の摂取
大腸がんは、便潜血検査(検診)や大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)で発見できます。とくに便潜血検査が陽性だった方は、必ず大腸カメラ(精密検査)を受けてください。早期であれば内視鏡だけで切除して大腸を残せることも多くあります。
食道がんは、のどと胃をつなぐ食道の粘膜にできるがんです。喫煙と飲酒(とくに両方の習慣がある方)が大きなリスク因子で、お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる体質の方は、とくに注意が必要とされています。熱い飲食物を好む習慣もリスクと考えられています。
初期にはほとんど症状がなく、進行すると、飲み込むときのつかえ感・しみる感じ、胸のあたりの違和感、体重減少などが現れることがあります。食道がんは胃カメラ(上部消化管内視鏡)で胃と同時に観察・診断できるため、早期発見が可能です。当院ではBLI・LCIなどの画像強調観察により、平坦で見つけにくい早期の食道がんの発見にも努めています。
お腹の中の臓器にできるがんは、腹部エコー(超音波)検査で調べることができます。
肝臓がんは、B型・C型肝炎ウイルスの感染や、脂肪肝・飲酒などによる慢性的な肝臓の障害を背景に発生することが多いがんです。初期は症状が出にくいため、肝臓の病気を指摘されたことがある方は、定期的な腹部エコーでの経過観察が大切です。当院は日本肝臓学会認定の肝臓専門医として、肝臓の評価・フォローにも対応しています。
膵臓がんや胆のう・胆道のがんは、早期では症状が出にくく、発見が難しいがんとして知られています。気になる症状(みぞおち・背中の痛み、体重減少、黄疸=皮膚や白目が黄色くなるなど)がある方や、糖尿病の急な悪化・膵のう胞を指摘された方などは、腹部エコーや血液検査などで確認することが大切です。
これらのがんは早期発見が難しい一方、腹部エコーは体への負担なく繰り返し受けられる検査です。当院では腹部エコー検査を行っており、必要に応じて精密検査ができる医療機関へ速やかにご紹介します。
このように消化器がんにはさまざまな種類がありますが、日本人にとくに多く、かつ内視鏡検査で早期発見・早期治療が期待できる胃がん・大腸がんは、定期的な検査による発見が何より大切です。次の章からは、あらためて胃がん・大腸がんを中心に、受診の目安と検査についてご説明します。
ここからは、とくに多い胃がん・大腸がんについてです。下記のような症状がある場合、胃や大腸に病気が隠れている可能性があります。早めの受診をおすすめします。
◉ みぞおちの痛み・不快感・胸やけが続く
◉ 黒い便(タール便)が出る
◉ 便に血が混じる(血便・下血)
◉ 便が細くなった・便秘や下痢が続く
◉ 食欲がない・体重が減ってきた
◉ 貧血を指摘された・疲れやすい
◉ 検診で「便潜血陽性」「要精査」と言われた
◉ 胃がん・大腸がんの家族歴がある
⚠ ただし、早期のがんはこれらの症状が出ないことがほとんどです。症状がない方も、年齢や検診結果に応じて定期的な検査をおすすめします。
胃がん・大腸がんの早期発見には、内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)が最も確実です。厚生労働省は、対策型がん検診として次の検診を推奨しています。
50歳以上の方に、2年に1回の胃内視鏡検査(または胃部エックス線検査)が推奨されています。胃カメラは粘膜を直接観察でき、必要に応じて組織検査(生検)やピロリ菌検査も同時に行えます。
40歳以上の方に、1年に1回の便潜血検査が推奨されています。便潜血検査が陽性だった場合は、必ず大腸カメラ(精密検査)を受けてください。陽性は大腸がんやポリープがある確率が高いことを示すサインです。
症状がある方や、がんの家族歴がある方、過去にポリープを指摘された方などは、検診の対象年齢や間隔にかかわらず、早めに内視鏡検査を受けることをおすすめします。当院では、消化器内視鏡の専門医が、苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラを行っています。当院で実施しているがん検診の内容については、下記のページもあわせてご覧ください。
がんは生活習慣だけで完全に防げるものではありませんが、日々の習慣を見直すことでリスクを下げることができます。国立がん研究センターが示す「がんを防ぐための新12か条」などをもとに、特に大切なポイントをまとめました。
✅ たばこを吸わない・受動喫煙を避ける
✅ お酒は控えめにする(飲む場合は適量を守る)
✅ バランスのよい食事(塩分・加工肉・赤肉を摂りすぎない、野菜・果物・食物繊維をとる)
✅ 適度な運動を習慣にする
✅ 適正体重を保つ
✅ ピロリ菌に感染している場合は除菌を検討する(胃がん予防)
✅ 定期的にがん検診・内視鏡検査を受ける
生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満など)の管理も、大腸がんをはじめとするがん予防につながります。
前川内科では、胃がん・大腸がんの「早期発見」に力を入れています。日本消化器内視鏡学会認定の内視鏡専門医が、苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラを行い、早期がんや前がん病変(大腸ポリープなど)の発見に努めています。検査中に見つかった小さな大腸ポリープは、その場で日帰り切除することも可能です。
手術や抗がん剤治療など、本格的ながん治療が必要な場合には、連携する専門の医療機関へ速やかにご紹介します。「早期に見つけて、適切な治療につなぐ」ことが、地域のかかりつけ医としての当院の役割です。
「しばらく検査を受けていない」「検診で再検査と言われた」「家族ががんになったので心配」——どんなきっかけでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。








